「どうしても経理業務のテレワークができない……」その理由は、独自の基幹システムにあるかもしれません。保存データが独自のカテゴリーに分けられていて会計情報として扱いづらい、社内のネットワーク以外からアクセスができない、といったお悩みはないでしょうか?
このページでは、独自の基幹システムを使用していることでテレワークを進められない場合の対応方法について解説します。できることから対策を実践して、少しずつテレワークできる環境を整えましょう。
経理のテレワークができない原因は独自の基幹システムかも?
新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークの実施企業が増えました。しかし、「ほかの部署はテレワークしているのに、経理部だけは相変わらず出社している」とお悩みではありませんか?
もしかすると、経理のテレワークが難しい原因は、独自の基幹システムにあるかもしれません。オーダーメイドで作られた独自性の高い基幹システムだと、経理のテレワークが難しくなる理由を解説します。
1.出社しなければ経理業務ができない
基幹システムによって接続できる端末やネットワークが限定されるがために、社内でなければ経理業務ができない状況になっていないでしょうか?自社に合った生産管理や在庫管理を行おうと、基幹システムをオーダーメイドで構築した会社によく見受けられる課題です。
会社の事業内容に合わせるとシステムが複雑化してしまい、ワークフローと会計業務のつなぎ込みや会計データの抽出が難しくなります。セキュリティの観点から社内アクセスしか認めない企業も多く、出社しなければ経理業務のできない状況が生まれやすくなります。
2.ほかのシステムと連携できない
独自に構築した基幹システムが複雑化してしまい、ほかのシステムとの連携が難しくなることがあります。すると、各部門から提出された帳票をもとに、会計システムにデータを打ち込む業務が残りやすくなるのです。
たとえば、勤怠管理システムと給与管理システムが連携していなければ、全社員の勤怠表を印刷し、その内容を給与明細システムに打ち込みなおして給与計算する必要があります。ワークフロー上のタイムラグが発生しないよう、毎日出社して入力作業を行う経理部も珍しくありません。
独自の基幹システムでもテレワークするための対策方法
実は、独自の基幹システムを使っている場合でも、テレワークへの移行は段階的に可能です。社外からのアクセスやシステム同士の連携を工夫することで、経理のテレワークを実施できます。
1.社外からのアクセスを可能にする
社外からの基幹システムへのアクセス( リモートアクセス )を可能にしましょう。BCP(事業継続)の観点でも、リモートで会社PCや基幹システムにアクセスできる環境整備は重要です。
社外から基幹システムにアクセスするには、「リモートデスクトップ」や「仮想デスクトップ」、「VPN接続」の仕組みが有効活用できます。
- リモートデスクトップ:社内に置かれた自分のPC画面を遠隔で操作でき、作業・ファイルはオフィスにある端末側に保存される
- 仮想デスクトップ:サーバー上に仮想的に作成された各自のPCのデスクトップ環境にアクセスでき、 作業・ファイルはオフィスにある端末側に保存される
- VPN接続:仮想専用線と訳され、仮想的に作られる各ユーザー専用の回線のこと。プライベートなネットワーク接続が担保できる
社外からのアクセスを許可するユーザー(社員)や端末の検討と合わせて、リモートアクセスの整備を検討しましょう。
2.CSVで出入力をする
基幹システムと会計システムが連携していない場合でも、CSVを活用することで入力作業を軽減できます。具体的には、会計に関わるデータを各部門から集める際に、紙ではなくCSV形式のファイルでもらうようにします。CSVなら会計システムにデータをそのまま流し込めるためです。
基幹システムを管理・運用しているIT部門・担当者に相談し、必要な数字を基幹システムから吐き出してもらう手順を組みましょう。その際、経理部門でフォーマットを作成しておけば、相手の協力を得やすくなります。CSVファイルをメールやチャットでやり取りすれば、テレワークでも会計業務が実施できるようになります。
3.電子化を進める
証憑の電子化・ペーパーレス化を進めるだけでも、一気にテレワークがしやすくなります。いつでもオンラインで社内の経理情報にアクセスし、申請や承認も行える環境を整備するための一歩となるからです。
紙のデータは電子保存するようにし、申請や承認もパソコン上で行えるようにしましょう。あわせてデータで数字を集計・管理する習慣をつくることで、テレワークに移行しやすくなります。
基幹システムのクラウド化も検討してみよう
本格的に経理のデジタル化・テレワーク実施をしたいと考えているなら、思い切って基幹システムのクラウド化も検討しましょう。クラウド化できれば、VPNやリモートデスクトップといった仕組みを間に挟まなくても、社外から基幹システムへアクセスできるようになります。
ソフトウェア同士をつなぐAPIの仕組みを活用することで、基幹システムとその他のシステムの連携もしやすくなります。これにより、ワークフロー上の承認をシステム上で行い、その内容で請求書や納品書を作成、電子データで出力・送付する、といったことが可能となるのです。
出張先や研修先からもアクセスできるため、業務と業務の隙間時間を有効活用できるようになるでしょう。もちろん、自宅やコワーキングスペースからのアクセスも可能となり、「経理は必ず出社しなければならない」といった常識を覆せます。午前中は在宅、午後からは出社といった柔軟な働き方に対応でき、社員にとって働きやすい部署となるでしょう。
基幹システムを一度にクラウド化することは難しいかもしれませんが、会計ソフトだけでもクラウド化できればテレワークでできる業務範囲が広くなります。
まとめ:独自の基幹システムでも経理のテレワークは実現できる
独自の基幹システムを使っていても、工夫次第で経理のテレワークは実現できます。社外から基幹システムへアクセスできるようにしたり、CSVで会計データを出入力することなら、比較的かんたんに始められるかもしれません。
また、普段から電子保存やデータで数字を記録する癖をつけておくことは、経理の効率化や決算の早期化などにも役立ちます。
本格的にテレワークに取り組みたい人は、会計ソフトや基幹システムのクラウド化まで検討することをおすすめします。社内にいなくても会計情報を確認しやすい体制を作り、経理業務の効率化を図りましょう。