【連載コラム1】テレワークの「4つのステージ」

テレワークのステージ
目次

あなたの会社はどの段階?テレワークの現在位置と目指す姿を確認しましょう

沢渡:テレワークは、各組織の状況に応じて大きく4つのステージに分かれます。それを絵で表したのが、「テレワークのステージ」(図1)です。

それぞれのステージについて解説していきますので、自社の現状把握や目標設定、あるいは組織のベクトルを合わせることなどに活用していただけたらと思います。

テレワーク0.0【すべての業務をオフィスで行う】
このステージでは、まだテレワークを実施していません。あるいは、一部、介護や育児または本人の怪我など特段の事情を抱えている人に例外的にテレワークが認められているレベル。原則として、すべての業務はオフィスで行われています。

テレワーク0.5【オフィスの業務を自宅から行う】
オフィスの業務を自宅から行っている状態です。いわゆるリモートデスクトップ接続(※1)やVPN接続(※2)などを通じて、自宅のパソコンから会社にあるパソコンおよび社内システムにアクセスしている状態です。メールソフトやスケジューラーなどもコンピューターの接続ごしに使います。あわせて、オンライン会議ツールやビジネスチャットなどを使って社内外の人と打ち合わせや会議を行います。

このステージでは、従来業務の改善やペーパーレス化はほぼ行われていません。印刷や押印、紙への記入などを伴う業務、郵送やFAXの送受信を伴う業務は残っており、そのためにオフィスに出社しなければならない状況です。

※1.リモートデスクトップ接続│コンピューター同士をネットワークで接続し、離れた場所にあるパソコンから繋いだ先のパソコンを遠隔操作できる技術・システムのこと。
※2.VPN接続│VPNとはVirtual Private Networkの略で「仮想専用線」の意味。インターネット上に仮想的な「専用線」を作成し、通信内容を暗号化することで安全な情報通信を確保する仕組みのこと。


テレワーク1.0【オフィスに依存せず業務を行う】
紙ベースの業務をデジタル化したり、あるいは、なくしたり減らしたりといった業務改善がある程度行われている状態です。テレワーク0.5とは異なり、従来の業務はオフィスに行かなくてもオンライン上でできる状況になっています。

とはいえ、法律の縛りや内部規則により、一部の紙ベース・押印ベース・手書きベース・郵送/FAXベースの仕事は残っている状態です。

テレワーク2.0【デジタルで新たなつながりを産む】
テレワーク2.0では、基本的にすべての通常業務はオンライン上でできますし、ほぼ完全にペーパーレスで進行されています(ごく一部、法規制により、押印が必要な書類や原本を保管しなければならない契約書類、財務会計に関する書類などがやむなく残っているレベル)。

このステージでは、ビジネスはこれまでになかった進化を遂げます。オンラインゆえの新しい価値やビジネスが生まれてきます。

例えば、浜松に拠点を置く中小企業をイメージしてみましょう。これまでは、浜松中心にマーケットを形成しており、お客さまも協力会社も浜松および近隣都市にとどまっていました。それが、離れた地域の人ともオンラインで一緒に仕事をできるようになり、これまで接点のなかった地域にサービス提供できるようになります。あるいは、全国の都市(あるいは海外)の企業や個人(フリーランス)とコラボレーション(協業)し、新たなビジネスを生んでいけるようになります。採用面でも、浜松に居ながらにして、大阪や東京といった他地域の人を雇用することも可能です。

このように、デジタルゆえの新しい価値を作り、新たな繋がりを生んでいく。これがテレワーク2.0の世界です。

多くの企業が取り組み始めた「テレワーク0.5」、その先へ進むためのポイントとは?

杉浦:新型コロナウイルスによる外出自粛の一件があって、多くの企業が緊急的にテレワークを実装したと思います。ですが、その多くが「テレワーク0.5」のステージだったのではないかと感じているところです。

沢渡:そうですね。多くの企業が、まず「テレワーク0.5」を目指し、実現するのに汗をかいている状態だったのではないでしょうか。あるいは、「テレワーク0.5」を進めている状態で緊急事態宣言の解除を迎え、今に至っていると思いますね。

もっとも残念なのが、緊急対応として一次的に「テレワーク0.5」のステージに入ったものの、緊急事態宣言明けに「テレワーク0.0」に戻ってしまうことなんです。逆戻りするのではなく次のステージに進んでいくことで、企業も個人もさらに成長し、今までにはないさまざまなメリットを享受することができます。

まず、「テレワーク0.5」から「テレワーク1.0」に進むことで、業務改善が行われ仕事の効率化が進んでいきますね。さらに、「テレワーク2.0」に移行できれば、新たなビジネスチャンスやより良い人材を見つけることに繋がります。そうして組織と個人が成長していき、組織と個人の発展、ひいては地域の貢献に結びついていくのです。

杉浦:「テレワーク0.5」の段階で止まっている企業が多いのは、もしかすると「テレワーク0.5」と「テレワーク1.0」の間に大きな壁があるからでしょうか?

沢渡:「テレワーク0.5」と「テレワーク1.0」の間には確かに壁があります。その壁は、今までオフィスで行ってきた業務を改善するかどうかです。

自社内に、紙の原本でなければ受け付けられなかった業務はありませんか?例えば、経費申請や請求処理、支払処理などです。それらをクラウドサービスを使って、あるいはメールベースであっても電子ファイルでの申請ができるようにするといった改善ができるかどうかです。

加えて、「テレワーク0.5」のステージの企業では、コミュニケーションのやり方やスキルが問題になるケースも多々あります。離れているとうまくコミュニケーションができない、部下をマネジメントできないなど。これを機に、コミュニケーションのやり方を見直すチャンスととらえ、スキルアップも図って欲しいですね。離れていても仕事を回すことができる。それができる組織も個人も、間違いなく強いですから。

杉浦:「テレワーク0.5」から「テレワーク1.0」に移るときに必要なのは、権限設計とワークフローの整備ですよね。押印の手間や紙をなくすために、誰がどのような権限を持っていて、どこまで承認してよいかを企業で決めていくこと。そして、設計した承認経路をワークフローシステム上で運用することで、業務自体がクラウド上に移行されていくのではないでしょうか。

沢渡:おっしゃるとおりです。「テレワーク0.5」と「テレワーク1.0」の違いは、業務の「リエンジニアリング(業務プロセスの再構築)」があるかどうかです。

杉浦:ちなみに、まずはオンライン会議ツールやチャットツールを使うところから始めると、テレワークを実装しやすい印象があります。コミュニケーションツールを導入してみるというのは、まさに、「テレワーク0.5」の状態を作っていることなのだと思いました。

沢渡:そうですね。まずは「テレワーク0.5」を実施してみる、試してみる。そこで浮き彫りになった業務上の課題を改善し、「テレワーク1.0」へ進められたら良いですね。そして、できれば、「テレワーク2.0」を目指し、組織と個人が成長する姿を描きながら、「自分たちの組織はどこに進んでいくのか?」という議論に繋げていっていただけたらと思います

「『テレワーク0.5』でいいや」あるいは、「緊急事態宣言が終わったから『テレワーク0.0』に戻す」では、とても残念です。なにより、もったいない!テレワークはチャンスです。組織も個人も、さらには浜松という都市そのものが未来に向けて魅力的に発展し、「浜松で働きたい」「浜松とつながりたい」多くのファンをひきつけられるようテレワークを武器として活用していってください。

デジタル化やオンライン化を進め、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を目指すテレワーク。その状況によって、大きく4つのステージに分けられるとのことでした。「テレワーク0.0」の状態から、まずは「テレワーク0.5」を実施してみること。そして、「テレワーク1.0・2.0」へと業務や働き方アップデートしていくことが肝心です。

今回のコロナの件で、「テレワーク0.5」に踏み込んだ企業も多い中、もしも今後、0.5より先へ進めなければどのようなリスクを抱えることになるでしょうか?「テレワーク1.0・2.0」にステップアップするためには、どんなスキルや環境整備が必要か? その問いに向き合うことで、あらゆる個人・組織がより価値ある仕事をできるようになるヒントをお伝えできればと思います。次回以降も、ディスカッション形式で分かりやすくお伝えしていきますので、ぜひご覧ください。

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【対談者プロフィール】

沢渡 あまね 氏
あまねキャリア工房 代表(フリーランス)、株式会社NOKIOO顧問(兼エンジニアリングマネージャ)、株式会社なないろのはな取締役、株式会社エイトレッドフェロー1975年生まれ。作家、業務プロセス/オフィスコミュニケーション改善士。
日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社を経て2014年秋より現業。経験職種は、ITと広報。300以上の企業/自治体/官公庁などで、働き方改革、マネジメント改革、業務プロセス改善の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。著書に『仕事ごっこ』『職場の問題地図』『マネージャーの問題地図』『業務デザインの発想法』(技術評論社)、『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『ドラクエに学ぶチームマネジメント』(C&R研究所)など。趣味はダムめぐり。

杉浦 直樹 氏
株式会社We will 代表1975年生まれ浜松市南区出身。大学卒業後日本オラクルにて会計ERPパッケージの13社同時展開プロジェクト等、多くのプロジェクトに携わる。同社退社後、米国ベンチャー企業を経て市内税理士事務所へ入所。その後、仲間とともに税理士法人We will、株式会社We willを設立。オープンイノベーション施設であるThe Garage for startups を主催。

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