【連載コラム2】コロナ後、「テレワーク止めます」で損すること

テレワークのステージ
目次

「テレワーク0.5」における3つのパターンと特徴

沢渡:前回の記事では、「テレワークの『4つのステージ』」を解説し、いま、多くの日本の企業が「テレワーク0.5」のステージにいるとお伝えしました。今回は、「テレワーク0.5」にまつわる経営リスクや「テレワーク1.0・2.0」に進む意義について詳しく見ていけたらと思います。

実は、「テレワーク0.5」の段階にいる企業も、大きく3つの層に分かれます。

(パターン1)「テレワーク1.0」や「テレワーク2.0」に進んでいく企業
(パターン2)「テレワーク0.5」に留まる企業
(パターン3)「テレワーク0.0」に戻ってしまう企業

沢渡:以上の3つを詳しく解説します。

パターン1の企業、つまり「テレワーク1.0」から先のステージに行けるのは、「テレワーク0.5」を通じて、今までの業務の非効率性や非快適性に気付けた企業です。

例えば、「今まで満員電車で通勤してたのには、何の意味があったのか?」と問うてみる。すると、満員電車が事業継続のリスクとなっていたことに気づくかもしれません。個人としても苦しいだけだったし、企業側も電車遅延や混雑、あるいは、感染による事業継続リスクを負っていたなと。

そうしたリスクを問題視できた企業は、テレワークを「あたりまえ」の働き方の選択肢としてより推し進めようとする。「テレワーク1.0」またはその先の「テレワーク2.0」に向かおうとしていると言えます。

2つ目のパターン、すなわち、「テレワーク0.5」に留まってしまう企業は、テレワークが組織の仕事や社内の風土にうまく浸透しなかったところです。あるいは、テレワークで直面した、IT環境の未整備な状態、コミュニケーションのしにくさや仕事のやりにくさといったことを改善しようとせずに、従来の仕事のやり方をよし(またはやむなし)としています。

そして、3つ目の「テレワーク0.0」に戻ってしまう企業。これは、「テレワーク0.5」において仕事の成果が出せなかったケースであり、残念ながらこのパターンも多くみられます。

杉浦:なるほど、緊急事態宣言が解除され平常に戻ったことで、パターン2(「テレワーク0.5」に留まる)とパターン3(「テレワーク0.0」に戻ってしまう)企業が、一定数ありそうな気がします。

沢渡:さらに、パターン2とパターン3の企業にも、大きく分けて2つの傾向があります。

1つ目が、IT環境やネットワーク環境が不十分である組織です。また、ITを使いこなすリテラシーや技術が備わっていないことも考えられます。

2つ目は、リモートで仕事を遂行するための業務改善や業務設計ができていない組織です。テレワークだと言いながら、実質的には自宅待機状態になってしまう原因はまさにここにあります。

テレワーク先進企業と旧態企業の間に広がる“2つの格差”

杉浦:しかしながら、今回の件をきっかけに、「テレワーク1.0・2.0」を実現していこうとする企業は実際にあります。すると、将来的には、オープンに繋がる仕事のやり方が確実にスタンダードになると思うんです。

そのとき、パターン2やパターン3にいる企業が、「テレワーク1.0・2.0」にすんなり移行できるかといえば難しいのではないでしょうか。

沢渡:おっしゃる通りです。「テレワーク1.0・2.0」に進める企業と、「テレワーク0.5・0.0」にいる企業間のステージ格差は、今後より大きくなってくると考えられます。

とくに浮きぼりになるのが、次に挙げる“2つの格差”です。

1つ目は、テレワークの先進企業と旧態依然の仕事のやり方を進める企業の間にある格差。これは、テレワークをするかどうかという問題ではありません。本質的には、デジタルの世界で価値を生める仕事のやり方を経験をしているかどうかの差なのです。

先進企業は、あらゆる地域の人と繋がって新しい価値を生みだし、利益体質になっていきます。そうした企業には、デジタルを使いこなせる優秀な人が集まってきますから、経営も好スパイラルに入っていくはずです。

一方で、旧態依然でアナログなやり方を続けてしまうと、当然ながら働く場所が制約されます。社会的な危機に対しても、実質的には自宅待機のような対応しかできません。すると、収入や生活の安定にもダイレクトに影響が出てきてしまいますから、働く場としてのリスクは高まります。したがって、取引先の開拓や人材の確保といった面においても、大きなマイナスになってしまいます。

杉浦:テレワークのステージを先に進めないことが、経営上のリスクになってしまうということですよね。

沢渡:そして、2つ目の格差が、都市部と地方部の格差です。とくに東京の企業は、今回のコロナウイルスの一件で、いやがおうにもテレワークを経験した会社が多いと思います。テレワークでも十分に価値ある仕事ができると気付いたでしょうし、杉浦さんが仰ったように、未来(「テレワーク2.0」のステージで実現される、人と企業が自由につながり経営の好スパイラルを産んでいる状態)を見てしまった個人や企業もあるのです。

そうした都市部の企業は、ますます自らの仕事のやり方を改善し、新たな人や都市とつながって価値を出していくフェーズに入っていくはずなんですね。

一方で、コロナの影響が比較的小さく、外出自粛規制が緩やかに行われた地方部では、以前の仕事のやり方に戻ろうという流れが強いかもしれません。あるいは、実質的には自宅待機状態で仕事が進まなかったので、テレワーク(0.5)の実施すら止めてしまう。

すると、都心部の先進企業と地方部の旧態企業との格差がものすごく広がっていくことになります。この格差に気付けなければ、良い人材や新しいビジネスを獲得する機会を逃してしまいます。

都市部の先進企業は非常にオープンです。デジタルの仕事のやり方が当たり前ですし、オンライン上で各地の企業・人とも繋がろうとします。しかしながら、肝心の地方企業側が受け入れられる状態になければ、そこからビジネスは発展しませんね。

杉浦:最近、非常に興味深いニュースがありますよね。コロナ禍で、地方に移住したい人、いわゆるUターン、Iターン、Jターンの希望者が増えていると。

沢渡:そうですね、働く場所や暮らす場所として地方に追い風が吹いています。そんな中でもし、地方の企業側がクローズドな働き方や古い仕事のやり方をしていればどうでしょうか?都市部の人が来ても定着しないでしょうし、東京の先進的な企業に戻ってしまう人もいると思います。

したがって、いま、ここで変われるかが鍵です。「テレワーク1.0・2.0」を目指し、デジタルな仕事のやり方やオープンに人と繋がれる働き方に変えていけるかどうか。それが、良い人材を獲得・定着させ、ひいては組織の成長格差にダイレクトに繋がっていくと考えられます。

今回は、「テレワーク0.5」より先へ進めない企業が抱えてしまうリスクについてお伝えしました。都心部を中心にテレワーク先進都市が現れ始めている中、浜松市内の企業もテレワークと向き合う重要性が増しています。

次回、「浜松こそ、テレワークしないともったいないのはなぜ?」をテーマに、2者のディスカッションをお届けします。

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【対談者プロフィール】

沢渡 あまね 氏
あまねキャリア工房 代表(フリーランス)、株式会社NOKIOO顧問(兼エンジニアリングマネージャ)、株式会社なないろのはな取締役、株式会社エイトレッドフェロー1975年生まれ。作家、業務プロセス/オフィスコミュニケーション改善士。
日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社を経て2014年秋より現業。経験職種は、ITと広報。300以上の企業/自治体/官公庁などで、働き方改革、マネジメント改革、業務プロセス改善の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。著書に『仕事ごっこ』『職場の問題地図』『マネージャーの問題地図』『業務デザインの発想法』(技術評論社)、『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『ドラクエに学ぶチームマネジメント』(C&R研究所)など。趣味はダムめぐり。 

杉浦 直樹 氏
株式会社We will代表1975年生まれ浜松市南区出身。大学卒業後日本オラクルにて会計ERPパッケージの13社同時展開プロジェクト等、多くのプロジェクトに携わる。同社退社後、米国ベンチャー企業を経て市内税理士事務所へ入所。その後、仲間とともに税理士法人We will、 株式会社We will を設立。オープンイノベーション施設であるThe Garage for startups を主催。

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