テレワーク下における労務管理のリスクはどこにある?業務実態にあわせて就労制度を見直そう

テレワークの普及が進むなか、従業員の労務管理をどうしようかと悩んでいる上司の方や総務ご担当者も多いのではないでしょうか。職場以外で働くテレワークでは、オフィス勤務のときと同じように労務管理することは難しくなるからです。

しかしながら労務管理を工夫・再設計しなければ、従業員の働きすぎや不適切な人事評価を招き、「働きにくい職場」と感じられる場面が増えてしまうかもしれません。

今回の記事では、テレワーク中に発生しうる労務管理の課題と解決方法について解説します。

目次

テレワーク中に発生しうる労務管理の課題4つ

職場に出社しないテレワークでは、オフィス勤務を前提とする労務管理方法のままだと課題が生まれてしまいます。なかにはコロナ禍によってテレワークを早急に実行したことで課題に直面する総務・人事担当者もいるかもしれません。テレワーク中に発生しうる労務管理の課題について解説します。

1.長時間労働になりやすい

いつでもどこでも働けるテレワークでは、長時間になりやすいといった問題が発生しています。なぜなら、プライベートと仕事の境界が曖昧になりやすく、何時間も業務を続けてしまう人が一定数いるためです。また、社員1人ひとりに業務管理が行き届かず、業務量過多が発生して残業をしてしまう人もいます。

2.労働時間の把握が難しい

テレワーク中は、社員の労働時間を正確に把握することが難しくなります。社員がいつ仕事を開始・終了しているか、勤務の実態を把握しづらいためです。タイムカードの物理的な打刻ができないと、自己申告を基本としている会社もあります。勤怠管理システムやチャットなどで管理するルールを作らなければ、正確な労働時間の管理はできないでしょう。

3.人事評価がしづらい

とくに成果の見えづらい業務に当たっている従業員の人事評価がしづらく、社員から不満が出る恐れがあります。上司が働きぶりや就業状況を見て把握しやすいオフィスと違って、テレワークでは「部下が何をしていたか」を把握することが難くなります。そうした見えないプロセスも適切に評価できなければ、社員の士気は下がるでしょう。

4.労災認定が難しい

テレワークだとプライベートと業務の線引きが難しく、労災認定が難しいケースが増えます。労災を申請するときは、業務によるものであることを証明しなければならないためです。

テレワーク中でも、業務上の理由で負傷・疾病・障害・死亡が発生すると労災保険の適用となります。しかしながら、「本当に業務に関連した傷病であるか」の線引きが難しいことが問題点となります。

知っておきたい!テレワーク中の労務管理の方法

テレワーク中の労務管理は難しいと思われがちですが、工夫をすることで格段に管理がしやすくなります。知っておきたいテレワーク中の労務管理の方法を4つ確認しましょう。

1.勤怠管理ツールで労働時間を把握する

勤怠管理ツールを導入し、従業員の労働時間を把握しましょう。自動で就業時間を集計・管理できるため、管理業務の削減になります。

勤怠の打刻もパソコンやスマホ(アプリ上)からできるシステムが提供されています。休憩時間や中抜け時間も打刻できるため、労災の判断にも役立つでしょう。もし勤怠管理ツールの導入が難しくても、以下のような方法で簡易的に管理できます。

  • メール・チャットツールで出退勤時刻や休憩時間の連絡を残す
  • PCの使用・電源ログを取る
  • 電話で始業と終業を報告する

自社に合う方法で勤怠管理をし、正確な労働時間を把握しましょう。

2.タスク管理ツールで就業状況を把握する

タスク管理ツールを取り入れ、就業状況を把握しましょう。1人ひとりのタスクを見える化し日々割り振ることで、業務量の偏りや長時間労働を防げます。少し業務の進捗が遅れ出したタイミングでコミュニケーションを取り、チームの仕事を円滑にマネジメントできることも魅力です。

もしツールの導入が難しいのであれば、エクセルでガントチャートを作って運用することもできます。誰がどの業務を担っているか、進捗はどうなのかなど、就業状況を一目で分かる工夫をしましょう。

3.人事評価基準を明確にして正確に評価できるようにする

テレワーク中は従業員の働きぶりを目視で確認できないため、人事評価基準を明確にしましょう。項目を細分化し、実際の仕事内容と比較しながら評価することで、従業員は評価内容に納得できます。

定期的にWeb面談を実施し、部下が自己PRできる機会を作ることも大切です。毎月の目標や成果までのプロセスの振り返りなどを確認することで、より適正な評価を与えられるでしょう。

4.労災認定の基準を周知する

テレワークにおいても労災認定ができることや、認定の基準を従業員に周知しましょう。「在宅中のことだから」と労災の申請をしない従業員を防ぐためです。

認定の基準は、業務起因性や業務遂行性の有無が重要となります。当然、私的行為に伴う傷病は労災認定はされません。同じ「自宅で転んだ」であっても、食事の準備中であれば認定されず、業務のために立ち上がったタイミングなら労災認定されます。

このような線引きを明確にするためにも、労災認定の基準はしっかりと周知しましょう。

厚生労働省のガイドラインを参考にしよう

テレワーク導入に向けた労務管理に不安があるなら、厚生労働省で公開されているガイドラインやQ&A集を参考にしましょう。具体的に気をつける点や実務に使えるQ&Aが掲載されています。

(参考)厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」|https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000683359.pdf

(参考)厚生労働省「テレワーク導入ための労務管理等Q&A集」|http://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/13.pdf

まとめ:労務管理を徹底してテレワークする従業員をサポートしよう

コロナ禍によって多くの会社でテレワークの導入が進められましたが、労務管理が不十分だと従業員の働きがいを奪いかねません。「テレワークは快適だ」と思ってもらえるよう、労務管理を徹底し、テレワークする従業員をサポートすることが重要です。

もし、テレワークに移行するなかで課題を見つけたら必要に応じて、随時改善を図ることも欠かせません。自社に必要なツールを見極め、従業員が働きやすいと感じるテレワークを実現させましょう。

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