テレワークの費用負担、どこまで会社が工面・負担するべき?対象と課税範囲でわかりやすく解説!

テレワークを導入する際に浮上する課題の1つに、テレワークで働く環境を整えるのに必要な経費を誰がどこまで負担するのかがあります。

従業員の自宅は会社の管理下に無い領域ですが、業務に必要な経費は会社が負担しなければなりません。しかし、テレワークの経験がない企業にとっては、会社の管理下に無い領域の経費をどこまで負担するかは悩む点だと思います。

本記事ではテレワークの費用負担をどこまで負担するべきかについて解説します。

目次

テレワークで生じた費用は会社負担が原則

テレワークで生じた費用は会社が負担するのが原則です。なぜなら、業務を遂行するにあたって必要だった費用と考えられるからです。

労働基準法では「労働者に食費や作業用品そのほかに負担をさせる場合は、就業規則に定めなければならない(第89条第1条第5項)」とされています。また、同法は従業員に不利益を課す事項を一方的に就業規則に書いてはいけないとしています。

したがって、合理的な理由がない限りテレワークにかかる費用は会社負担が原則であり、労使で合意した上で就業規則を変更しなければ費用を従業員に負担させることはできないのです。

とはいえ、テレワークをしている従業員は自宅など私的な領域で活動しているわけで、経費か経費でないかの線引きが難しく感じるかもしれません。

どのように負担するか?どこまで負担するか?

会社がテレワークの費用を負担する方法は以下の2通りの方法があります。

  1. 従業員が費用を立て替えたあと、領収書をもとに会社に請求
  2. 在宅勤務手当として固定額を一律で支給する

1の場合は、従業員が立て替えた実費を後から精算するやり方です。会社の経費精算の一般的なやり方と同じなので、こちらのほうがわかりやすいやり方かもしれません。

しかし、テレワークの実費には金額がはっきりしないものもあります。例えば電気やインターネット回線は家庭と共用で使うことになるので、費用のうちどれだけの割合が業務に利用されたかを正確に割り出すのは困難です。

国税庁のホームページに記載されている「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」によると、労働時間が8時間、睡眠時間と労働時間を除いた私的な時間がだいたい8時間なので、電気代やインターネット代の半分を会社が負担する例を挙げています。

また、最近は2のように在宅勤務手当として固定額を一律で支給する会社も増えています。在宅勤務手当として固定額を一律支給する方法のメリットは事務手続きが簡便だという点です。

ただ、支給する固定額があまりに少ないと、実質的に従業員がほとんどを負担している状態になってしまいます。社員とよく話し合い、実情にあった十分な金額を支給する必要があります。

人事院が公表している「令和2年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」によると、在宅勤務手当の平均支給額は月に4,104円という結果が出ています。目安にしてみてください。

参考:令和2年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要/人事院

課税対象と非課税対象

テレワークの費用を支給した場合、課税対象として源泉徴収が必要な場合があります。そこでもう一度、テレワークの費用の支給方法を以下に記載します。

  1. 従業員が費用を立て替えたあと、領収書を元に会社に請求
  2. 在宅勤務手当として固定額を一律で支給する

これらの方法のうち、2「手当として一律を支給」する場合は課税対象となり、源泉徴収が必要です。1「費用を立て替える」場合は非課税となります。

なぜなら、税法上は2の場合は給与とみなされるからです。一方で、1の場合は立て替えた実費を返還しているだけとみなされるので給与にはならず、非課税となります。

【参考】在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ/国税庁

テレワークにかかる3大費用

テレワークで会社が負担すべき費用のうち主な3つは以下の通りです。

  1. 光熱・通信費
  2. デバイス・事務用品費
  3. オフィス・カフェ代

以下、個別に解説します。

1.光熱・通信費

テレワークではパソコンを利用しますので、電気代とインターネット代の一部は会社が負担しなければいけません。先述したように、私的な用途と共用で使うことになるので、合理的な計算によって負担割合を算出する必要があります。

よく用いられる計算法は1日24時間のうち、睡眠時間を除いた時間を電気やインターネットを利用している時間と考え、その利用時間のうち勤務時間の割合を計算する方法です。例えば国税庁の例示では以下の式で算出されます。

業務のために使用した光熱・通信費=従業員が負担した1か月の光熱・通信費 × (その従業員の1か月の在宅勤務日数 ÷ 1ヶ月の日数) ÷ 2

これは睡眠時間を8時間、業務時間を8時間、それ以外の私的時間を8時間と考え、起きている時間である16時間のうち、業務時間が半分であるので2分の1を負担する考え方です。この通りの割合でなければいけないわけではありませんが、どれぐらいの割合にするかは合理的根拠が必要です。

2. デバイス・事務用品費

パソコン、デスク、文房具などの事務用品費もテレワークの費用となります。これは業務遂行のために使っている場合は全額が会社負担です。

物品の場合は現物で支給する方法も考えられます。しかし、この場合でも税法上は給与とみなされ、課税対象となるので注意が必要です。

実費を精算する方法の場合や、テレワーク終了後に物品を会社に返還する場合は課税対象とはなりません。

3.オフィス・カフェ代など

コワーキングスペース、カフェ、レンタルオフィス等の利用料もテレワークの費用となります。これは事前に会社が認めている場合は負担しないといけません。

自宅でテレワークがやりたくても、小さな子どもがいたり、スペースが確保できなかったりする場合は外の施設を利用する必要があるため、仕事に必要な費用として会社が負担する必要があります。

まとめ:費用負担のルール作りで快適なテレワークを

テレワークの費用負担は何をどれだけ負担するかを労使で話し合い、事前に決めておくことが必要です。

とくに電気代や通信費などは、社員のプライベート領域と被るため、合理的な計算方法で按分しなければいけません。また、一律で固定額を支給する際は課税対象になりますので注意が必要です。

しっかりとしたルールを作り、快適なテレワーク環境を実現しましょう。

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