経理にテレワークを導入しようと思ったときに、「何から手をつけるべきか分からない」とお悩みの人は多いでしょう。しかしながらテレワークをスタートさせるために、すべての業務を社外でできるように環境を整える必要はありません。
経理のテレワークは、在宅でもできる仕事とオフィスでなければいけない仕事を分けることが重要です。また、簡単なことからオンライン化を進めるだけでも、1日2日のテレワークが可能になることが多くあります。
このページでは、経理業務のテレワークの始め方を4つのステップで解説します。簡単に取り入れられることや社内の課題を優先し、テレワークの下地を整えましょう。
経理業務のテレワークの始め方を4ステップで解説
経理業務のテレワークは4つのステップに分けて始めていきましょう。いきなり全業務をテレワークに移行することは難しくても、段階的にならどのような会社でも進めていけるはずです。
以下より順番に確認し、取り入れられることがあるかどうかチェックしてください。
ステップ1.ネットバンキングに変える
まず、銀行取引や残高確認のために窓口へ出向いていた方は、ネットバンキングへの切り替えをオススメします。インターネットバンキングとは、金融取引をインターネット上で行えるサービスです。
パソコンからインターネットバンキングにログインすることで、今まで銀行やATMへ足を運んでいた業務をオンライン上で完結できるようになります。たとえば、次のような業務がパソコンで完結できます。
- 銀行口座の残高照会・明細照会
- 総合/給与振込
- 手形の発行や振込準備
- 税金・各種料金の払込
- 振込の組戻し・訂正・再振込
- 口座振替依頼
- 税金など各種支払い手続き
たとえば、家やコワーキングスペースからでも請求書払いや給料振込が可能になります。もちろん、WEBページやアプリから入出金確認もできるため、記帳の必要もありません。
今使っている銀行口座をそのままネットバンキングにすることもできますし、この機会に手数料の安いネットバンキングに乗り換えることも検討できます。
ステップ2.ペーパーレス・電子化を進める
次に、ペーパーレス・電子化を進めましょう。各種の証憑を電子ファイルとして管理できるようになれば、社内にいなくてもどこからでも内容を確認し業務を進められるからです。具体的には、以下の2つを実現させましょう。
- 請求書、領収書などのペーパーレス化(電子データでやり取りする)
- 印鑑の電子署名化
ペーパーレス・電子化によって得られるメリットはテレワークの実現だけではありません。ほかにも、印刷・保管コスト削減や情報漏えいリスクの軽減、情報管理のしやすさなどのメリットが挙げられます。電子ファイルは検索性が向上するため、書類を探す手間も大幅に減ります。
クラウドストレージや文書管理ツール、電子契約システム、電子サインシステムなどを導入し、自社にあったペーパーレス・電子化の形を検討しましょう。
ステップ3.クラウド型の会計ソフトを導入する
続いて、インターネットがあればどこからでもアクセスできるクラウド型の会計ソフトを導入しましょう。
クラウド型の会計ソフトとは?
売り上げや支出などの会計処理を記録するソフトウェアです。「クラウド型」とは会計ソフトの形式であり、ソフトウェアをPCなどにインストールせずともインターネット上で操作できるものを言います。
クラウド型の会計ソフトを導入することで、システム上で勘定科目の仕訳を行い、それらのデータを集計し決算書も作成ができます。その他のソフトウェアと連携することで、会計処理に必要なさまざまな社内データを自動で取得できるようになります。
そのためテレワークのためだけでなく、クラウド会計ソフトを導入するメリットは多岐にわたります。
- 経理業務にかかる時間を大幅に削減できる
- データからレポートを作成でき、即座に経営状況を報告できる
- 最新の状態で使えるため法改正にも対応できる
- サーバーの保守管理やバックアップの必要がなくなる
- 取引の発生時点で会計数字を取り込むことが可能
会計ソフト上では、証憑をPDFで読み取ったり会計数字をデータで管理したりします。そのため、 クラウド型の会計ソフト を導入するためには、ステップ2のペーパーレス化や電子化に慣れておく必要があるのです。
会計ソフトの導入は、リースアップや決算のタイミングが社内の負担が少なくオススメです。切り替えを円滑にできるよう、早めに比較検討を進めましょう。
ステップ4.クラウド会計ソフトに他の業務を紐づける
最後に、クラウド会計ソフトに営業や生産管理などの社内業務を紐づけて、データが自動取得される状態を目指しましょう。たとえば、以下のような業務管理システムを連携させると請求書作成や入金管理などの業務をスムーズに行えます。
- 経費精算
- 営業管理
- 勤怠管理
- POSレジ
さらに、ビジネスチャットツールと連携することで承認依頼や申請結果をリアルタイムで送受信できるクラウド会計ソフトもあります。他部署の業務効率も向上するため、社内全体における生産性向上が期待できるでしょう。
ステップごとに実現される経理業務
経理のテレワーク導入を4つのステップに分けて紹介しました。それぞれのステップをクリアするごとに経理業務の効率が大幅に向上するため、まずはステップ1だけでも積極的に取り組んでみてください。
具体的にはステップごとにどのような変化が起きるのでしょうか?以下で確認していきましょう。
ステップ1.銀行やATMへ行っていた業務がパソコンで完結する
ネットバンキングにすれば、銀行やATMへいく手間がなくなり、パソコンとインターネットさえあれば業務が完結します。会社によっては慣習的に毎日記帳のため出かけていた担当者もいるかもしれません。外出していた時間が不要となるため、ほかの業務に時間を割けるようになるでしょう。
ステップ2.手入力が減って人的ミスがなくなる
ペーパーレス・電子化を進めることで手入力が減り、人的ミスが軽減します。
今まで紙でもらっていた書類をCSVやPDFで出力してもらえば、データをソフトに読み込ませるだけで業務は完了です。もちろん、元のデータにミスがないか確認する必要はありますが、作業量は大幅に減らせるでしょう。
ステップ3.転記や記帳など二重の入力作業が減る
クラウド会計ソフトを使えば、二重で入力していた作業が一気に減らせます。会計ソフトへの入力、もしくはデータ読み込みにより、転記や記帳の作業がなくせるからです。
また、銀行口座やクレジットカードを連携することで入力作業が軽減します。自動で出入金データを取得されるため、銀行口座情報やクレジットカードの利用状況は常に把握することが可能なためです。入力のし忘れや数字の入力ミスも防げます。
ステップ4.リアルタイムのデータを確認できるうえに業務効率が上がる
他の業務システムと連携すれば、リアルタイムでデータを取得ができてスムーズに作業ができます。今までであれば、「営業部から報告がこないから先月の売上が確定しない」「退勤管理のデータがないから給料日前は激務になる」といった課題を抱えていたかもしれません。しかし、他部署で入力されたデータの中から必要な数字を会計ソフトに取り込めるため、キャッシュフローや日販などの経営に関するデータも迅速に報告できるようになります。
経理のテレワークを始めるためのITインフラの整え方
経理のテレワークを始めるにあたって、ITインフラの整備は必須です。どのようなITインフラが必要なのかを確認し、テレワークの環境を整えましょう。
デバイス
社外で仕事をするには、デバイスが欠かせません。以下のデバイスを揃えましょう。
- ノートパソコン
- スキャナー
- デュアルモニター
銀行業務や会計業務を社外で行うにはノートパソコンが必要なため、優先順位が高いデバイスです。印刷を必要とする業務をテレワークで行う場合はスキャナーを、より効率良く会計業務をこなしたい場合はデュアルモニターを用意しましょう。
作業環境
社外から業務ができるよう、以下のような作業環境を整えましょう。
- クラウド会計ソフト
- VPNやリモートデスクトップ
クラウド会計ソフトはインターネット上でアクセスができるため、どこでも経理業務ができる環境といえます。ログインIDとパスワード、デバイス/本人認証機能などの不正なアクセスを防止するための仕組みがついている場合がほとんどです。
その上で、ネットワークの安全性を守る仕組みを併用しましょう。VPN(専用の通信経路を作る仕組み)を利用したり、離れた場所・デバイスから職場のパソコンにアクセスできる「リモートデスクトップ」の仕組みを活用することも有効です。
コミュニケーション環境
テレワークによる部署内外とのコミュニケーション不足が発生しないよう配慮しましょう。
社外からでもメールを送受信できる環境を整備することはもちろん、ビジネスチャットツールを使って気軽に連絡を取り合えるようにしておくことも大切です。部署によってコミュニケーションツールが違うと統合が大変なので、事前に社内全体で統一したものを導入することをおすすめします。
また、自宅の就業環境については、厚生労働省のガイドラインで詳しい説明がされているため参考にしてください。
まとめ:経理担当が会社にいない日を作ろう
どのように経理のテレワークを始めるべきか悩んでいるのであれば、まずはネットバンキングの活用からスタートさせましょう。
ある程度、オンラインで経理業務できる環境が整ってきたら、「水曜日は経理担当者のテレワーク日」など、週1でテレワークの日を作ってみることもオススメです。徐々に他部署も経理担当が社内にいなくても、業務が滞りなく遂行していくようになるはずです。