テレワークの導入を検討していると、「何からやればいいのかわからない」「運用がスムーズにできるか不安」と感じて立ち止まってしまうことは、ありませんか?
テレワークの導入にはステップがあり、自社の経営課題と向き合って目的意識を持って取り組む必要があります。実際にロードマップを策定してテレワークの導入を進めていく際にも、多くの企業がぶつかる「壁」があります。
これらの「壁」を知っているのといないのとでは、対策が取れるか取れないかが大きく変わります。
そこで本記事では、テレワークの推進担当者に求められる知識と超えなければいけないハードルをまとめました。推進担当者になったものの、何から始めればいいかわからないとお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
コロナ禍を経てテレワーク普及率はどうなった?
まずコロナ禍を経てテレワークの普及率がどう変わったかを見てみましょう。
公益財団法人日本生産性本部が2021年10月に実施した『第7回働く⼈の意識に関する調査』では、2020年5月より柔軟な働き方に関する継続調査を行ってきました。同調査によると、新型コロナウイルス新規感染者数の状況に関わらず、テレワークのの実施率はおよそ2割に定着した結果がわかりました。
2割というと少ない印象を受けますが、地方も含めた全国平均だからこその数字となっています。テレワークを導入・実施してきた企業では、定着傾向に入ったと見ていいでしょう。
さらに、東京都に限ってテレワーク定着率を見ると、6割近くに上っています。東京都が11月に実施した『テレワーク実施率調査』によると、社員30人以上の都内企業のテレワーク実施率は57.2%でした。2020年4月から毎月調査されていますが、ほぼ50〜60%で推移しているため、この水準でテレワークが定着しつつある、といえそうです。
参考:
第7回働く⼈の意識に関する調査/日本生産性本部
テレワーク実施率調査/東京都
(※)ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究/総務省より
テレワークを続ける企業の理由
テレワークを続ける企業の理由は、通勤コストの削減がもっとも多いようです。令和3年版の『情報通信白書』によると、テレワークを「継続したい」あるいは「どちらかといえば継続したい」との意向を示している企業は66.4%でした。
同白書によると、テレワーク勤務者にテレワークのメリットを尋ねたところ「通勤時間が削減される」と答えた回答者が81.5%に上りました。次に、「好きな場所で作業ができる(53.8%)」、「自分や家族のための時間をとりやすくなった(45.1%)」が続きます。テレワークによりライフワークバランスが充実している様子がうかがえます。
これはあくまでも労働者側の意見で、企業側の継続意向の理由ではありません。しかしながら、通勤費の削減や働き方改革につながるため企業側のメリットともいえるでしょう。
テレワークを止めた企業の理由
テレワークを止めた企業の理由は「業種がテレワークと合わなかった」という意見がもっとも多くなっています。
東京商工リサーチの「第10回『新型コロナウイルスに関するアンケート』調査」によると、在宅勤務を取りやめたか実施していない企業のなかで「業務がリモートに不向きだった」と答えた企業が、86.5%に上りました。
それ以外の理由については、2位が「生産効率に支障が生じる」で22.6%、3位が「必要書類(契約書含む)が電子化されていない」で20.9%、と割合が少なくなります。
この結果について別の見方をすれば、「リモートに向いている業務なら問題なくテレワークできる」といえるでしょう。また「デジタル化による業務効率を達成できればテレワークがしやすくなる」という事実を示唆しています。
例えばリモートに向いていない職種の社員が産休や育休を取得する際に、リモートに向いている職種に配置転換した上でテレワークにするなどの活用方法が考えられるでしょう。
参考:東京商工リサーチ 第10回『新型コロナウイルスに関するアンケート』調査」
テレワーク導入には3つの壁がある
テレワークの導入にはどのような乗り越えるべき「壁」があるのでしょうか。おもに以下の3つの「壁」が考えられます。
導入ステップの壁
- 導入するメリットがわからない
- 社員から要望がない、あるいは、社員から抵抗に遭う
- 出社組の社員の負担が増える
- 費用がかかりすぎるためやりたくない
業務見直しの壁
- テレワークに向いている職種が無い
- 業務の手順が難しく、リモートでは不可能
- 社内のコミュニケーションが希薄化する懸念
- 顧客対応がリモートでは難しい
IT・制度の壁
- 情報漏えいリスクの懸念
- 文書の電子化が進んでいないため出社が必要
- 社員の評価の仕方がわからない
- 人事制度を変えるのに手間がかかる
- 給与計算が複雑になりすぎる
これら3つの壁を乗り越えるためにまずやるべきことを次のセクションで解説します。
テレワーク導入初期にまずやるべきこと
テレワーク導入初期にまずやるべきことは以下の3つです。まずはこの3つから手をつけましょう。
- 目標を明確化しよう
- 対象者と作業内容を把握しよう
- 推進体制を構築しよう
1.目標を明確化しよう
まずは目標の明確化が必要です。何のためにテレワークを導入するのか、を明確にしましょう。
業務効率の改善のためでしょうか?それとも、産休や育休社員の離職防止のため?そのような解決すべき自社の経営課題から洗い出し、テレワークの導入で解消する意識を持つことが重要です。
テレワークの導入で解決できる経営課題は大きく分けて5つあり、それらを“自社の言葉”で具体的に書き出すことが大切です。テレワークで解消できる経営課題について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
2.対象者と作業内容を把握しよう
目標が明確になったら、どの業務や社員をテレワークにするのか、対象を決めましょう。このとき、すぐにテレワークに切り替えられない業務だからといって、対象から外してしまうともったいありません。すぐにテレワークに切り替えられない業務にこそ、生産性の低さの原因となっている場合があるからです。
現状ですぐテレワークに移行できる業務、ITツールの導入によって移行が可能になる業務、制度や仕組みを変えれば移行が可能になる業務などに分けて、多角的に検討するのが大事です。テレワークの対象範囲の決め方については、以下の記事をご覧ください。
3.推進体制を構築しよう
対象者と作業内容が把握できたら、テレワークを導入するための社内制度を整えましょう。テレワークでは権限やタスクがあいまいな体制だと業務が進めづらいため、それらをきっちりと決める必要があるためです。
テレワーク導入のための業務の棚卸し・権限設計については、以下の記事をご覧ください。
まとめ:テレワーク導入の課題は1つひとつ解決していこう
テレワーク導入のためには、さまざまな課題を乗り越えなければなりません。すべてを一気に乗り越えようとするのは大変ですので、ロードマップを描いて1つひとつの課題を乗り越えていきましょう。
しかしながら、テレワークにあわせて業務改革をしていけば、テレワークが定着しやすくなり経営課題の解消にも役立ちます。テレワークを導入する際には、まず「目標の明確化」「対象者と作業内容の把握」「推進体制の構築」の3ステップが必要です。
参考にしていただけると幸いです。