「ITツールの導入」で終わらせない!テレワークの本当のメリットは経営課題の解決にある

「ITツールを導入すればテレワークを始められる」「ITツールが使えるようになることがテレワーク導入のメリットだ」そのように考える経営者の方が多いかもしれません。

たしかに、ITツールを導入すると、そのツールによって大きな効果が出るように思えます。

しかし、ITツールを導入するだけでは、テレワークの効果を十分に得られません。テレワークの本当のメリットは、その導入によって経営課題が解決される点にあるからです。

本記事では、テレワークを経営課題の解決に活用する方法や実例を紹介します。

目次

テレワークの導入をきっかけに自社の経営課題を見つめよう

テレワークの導入を単なるITツールの導入と考えてしまうのは、もったいありません。なぜならテレワークの導入は、経営課題の解消・軽減にとって役立つからです。

ITツールの導入だけを目的にテレワークを実施しても、定着させるのが難しくなってしまいます。自社に見合ったテレワーク形態にならず、テレワーク本来の効果も得られないためです。

ここではテレワークの導入について改めて考え、自社の経営課題を解決するための手段にしていきましょう。

テレワークで解決できる経営課題5つ

テレワークでは主に、以下の5つの経営課題が解決できます。

  1. 採用難・人材流出:育児や介護などをきっかけに離職してしまう、若手人材が応募してこない
  2. オフィスコストの増加:交通費や光熱費、資料の印刷代などのコストが多すぎる
  3. 低生産性:業務の効率が悪い、社員の仕事が遅い
  4. 事業継続への不安:災害時などに事業を継続できる体制がない
  5. 長時間労働:社員の長時間労働など業務負荷が多すぎる

テレワークが制度としてある会社には、ライフワークバランスを大切にしたい人材が集まりやすくなります。仕事のスケジュールを自分で組み立てやすいので、プライベートとの両立がかなうためです。育児や介護などのライフイベントが発生しても、在宅で働ける可能性がひらけます。

オフィス賃料や光熱費・印刷代といった、出社にまつわるコストもどんどん削減されます。出社を不要とした結果、オフィス面積を半減させた企業例もありました。テレワークによって、いつでも・どこでも仕事を滞りなく進められるようにするためには、業務を棚卸して効率化していく必要があります。その過程で労働生産性が高まり、残業も減っていくのです。

また、テレワークがあれば、有事の際にも事業を継続しやすくなり、株主や取引先に対してプラスの印象を与えられるでしょう。

このように、テレワークを通じて業務プロセスや組織体制の改革に取り組むことで、上記のような経営課題が解決しやすくなります。

まずは、自社にどのような経営課題があるかを具体的に洗い出してみてください。そうした作業を通じて、テレワークの導入目的を明確にすることが重要です。

テレワークの導入目的を“自社の言葉”で具体的に書く

テレワークの導入による効果を十分に得るためには、導入目的を「自社の言葉」で具体的に書きましょう。 「周りがやっているから」「感染症対策のために仕方なく」 といった一般論で考えてしまっては、自社に合ったテレワークの形ができずに、定着が難しくなってしまうからです。

一般論はあくまでも一般的な内容であり、すべての企業にぴったり適用できるものではありません。経営課題は企業の数だけあり、テレワークの導入目的も経営課題にもとづいて企業ごとに異なります。

例えば、

  • 人材流出の多い地域なのでエリア内で新規採用するのが難しい
  • 先代社長と現社長とで派閥があり社員間のコミュニケーションに溝がある
  • そもそも基幹システムが古すぎて業務の遂行が遅くなっている

上記のように、どの企業にも具体的な課題があるはずです。テレワークの導入や環境整備を、これらの経営課題を解決するきっかけにしていきましょう。

・人材流出の多い地域なのでエリア内で新規採用するのが難しい
→テレワークを可能にし、全国から優秀な人材を募集する
・先代社長と現社長とで派閥があり社員間のコミュニケーションに溝がある
→チャットツールを導入し、グループごとの会話を活性化する
・そもそも基幹システムが古すぎて業務の遂行が遅くなっている
→ ネットワークを見直す、クラウド化を検討する

テレワークできる環境を整備することは、経営課題の解決に大いに役立ちます。だからこそ教科書に書かれている通りにテレワークを導入するのではもったいありません。

自社の経営課題に向き合い、自社に合ったテレワークの形を考えるようにしましょう。

日ごろの悩みやモヤモヤにきちんと向き合う

テレワークを導入する際には、社員の日ごろの悩みやモヤモヤに向き合いましょう。なぜなら、社員が日ごろ感じている悩みやモヤモヤが、見落としている経営課題の発見に繋がるからです。

例えば、以下のように社員のモヤモヤを洗い出します。

  • 図面やプログラミングデータを次の工程に回すために、工場間を行き来しないといけない
  • 購買の部署に部品の発注書が回るのが遅くて、納期が遅れがちになる
  • 朝礼参加と日報提出があるから、営業が直行直帰できない

ちょっとした人の移動や紙ベースの仕事が、仕事を停滞させるネックになっている場合があります。社員がモヤモヤを感じている部分は、仕事の効率性を大きく妨げているポイントであることが多いということです。

これらをテレワーク(リモートで作業を進められる仕組み)で解決することで、業務効率が大きく改善するケースは多くあります。業務の効率が上がれば、社員のモチベーションも上がる効果も得られるため、向き合う価値は十分にあるのです。

テレワーク実施企業が感じている効果・メリット

東京商工会議所の調査によると、東京都内でテレワークを実施している企業では、残業削減や業務の効率化などの効果を実感しています。

  • 働き方改革(時間外業務の削減)が進んだ:50.1%
  • 業務プロセスの見直しによる効率化:42.3%
  • コスト削減:14.3%

社員の働き方や業務プロセスが効率化が進んでいることから、自社の経営課題にもとづきテレワークの導入目的を定め、テレワークを導入・運用する重要性がわかります。

以下の記事でもお伝えしたように、「感染症対策で仕方なく」ではなく、自社の目的を定めて積極的にテレワーク導入に取り組んだ企業は効果を実感しています。

参考:東京商工会議所:「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」

テレワークで経営課題が解決できた事例

さいごにテレワークを導入し、経営課題の解決に役立てている企業の事例を紹介します。

株式会社サカエ|お客様との商談時間を増やすためにテレワーク環境を整備

2022年に創業75周年を迎える機械の技術商社、株式会社サカエでは「御用聞き」から「提案型」の営業に進化したいという課題がありました。

そのためには、営業社員がお客様と会っている時間を増やし、見積書作成や日報などの間接業務を減らす・自動化する必要があったといいます。

そこで、営業支援ソフトを導入し、案件ごとに進捗を管理する体制を構築。お客さまと会話した内容や提出した提案書類、今後の提案内容や納品スケジュールなどをソフト上に入力するようになりました。これにより日報は簡単な報告のみとなり、直行直帰がしやすくなりました。残業時間も半減しています。

株式会社ソミック石川|自動車業界におけるデジタル化の波に乗るため生産体制を強化

株式会社ソミックマネージメントホールディングスとそのグループ会社でボールジョイントを主力とする自動車部品メーカーの株式会社ソミック石川では、国内グループ内約2,000名を感染症から守るためにテレワークを導入しました。

バックオフィスと製造の2部門それぞれの現状と課題を見極め、できることからテレワーク化。役員自らテレワークに取り組むことで、ビジネスの新たな可能性や業務効率化のアイデアを得ています。

デジタル化の急速に進む自動車業界の中で、自社の業務効率化を高めることも視野に置いてきました。今後は基幹系システムも見直し、各現場にとって必要なデータをタイムリーに抽出して届ける仕組み構築を目標にしています。

株式会社流研|片道2時間の通勤時間をなくし、遠方社員の離職を止める

北海道札幌市のソフトウェア開発会社「流研」では、社員の通勤時間が長すぎる課題がありました。片道2時間以上かかっている社員もおり、通勤と退勤だけで時間や体力を奪われ、業務の効率が上がらないなどの影響が出ていました。

そこでテレワークを導入するとともに、社内規定も変更。在宅での勤務を許可し、ミーティングはITツールで行うようにしました。その上でテレワーク期間を設け、その期間は月に1度の出社で済むように業務プロセスを改革しています。

その結果、社員の通勤と退勤の負担が軽減され、業務の効率が上がる効果が得られました。また、遠方に引っ越した社員が離職せずに働き続けられるなど、当初想定していなかった効果も得られています。

参考:地域企業に学ぶテレワーク実践事例特集

まとめ:テレワークを経営課題の解決に活用しよう!

テレワークを経営課題の解決に活用しましょう。テレワークの運用にはITツールを用いるので、ITツールを導入すれば効果が出ると思ってしまいがちです。しかし、ITツールを導入しただけではテレワーク本来の効果を得られません。

テレワークを導入する際は、自社の経営課題を洗い出し見極め、テレワークの導入目的を自社の言葉で設定することが重要です。非効率な業務やコミュニケーション上の課題など、社員が日ごろから抱えているモヤモヤにも向き合い、テレワークの力で解消していきましょう。

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