2017年から働き方改革に着手してきた常盤工業。2022年1月に完成した新社屋の「ときポート」ではフリーアドレス制を導入し、より柔軟で自由な働き方にチャレンジしています。
自社にあった「次世代の働き方」を作るため、IT環境の整備とあわせて社員との対話も大切にしてきたそうです。 常盤工業代表取締役社長の市川浩透さん(以下、市川さん)と総務本部係長の鈴木秀俊さん(以下、鈴木さん)にお話を聞きました。
会社名 : 常盤工業株式会社
設立 : 1951年3月
代表者 : 代表取締役社長 市川 浩透
所在地 : 静岡県浜松市中区新津町197番地
主な事業内容: 総合建設業(建築、土木、住宅)
総従業員数 : 97人 ※役員を除く
会社URL : https://www.tokiwak.co.jp/
「現場の働き方改革」は、現地で仕事を完結できる環境づくりから
2017年から働き方改革に取り組み始めた常盤工業。ITシステムを活用しながら、まずは現場を担当する社員が現地ですべての仕事を完結できるだけの環境を作っていきました。
「基本的に、現場担当者には直行直帰を推奨していますから、現場で仕事が完結できる環境を整備していきました」と市川さん。続けて、IT環境を整備した具体的な方法を教えていただきました。
「クラウドストレージにあらゆる資料を保管。ノートパソコンとスマートフォンを1人1台社員に配布し、各社員が現場でも案件進捗や必要な報告をできるようにしています。 また、案件の進捗管理や情報共有には、システム・アプリケーションを導入。協力会社さまにもユーザー権限を持っていただくことで、お互いに時間と場所に関係なく仕事を進められる環境を整えています」
【会社全体】
・グループウェア(サイボウズのガルーン)による全社員の情報共有
【現場全体(建築・土木・住宅)】
・建設現場の進捗管理:
図面・現場施工管理アプリを使用。
図面整理や写真管理、帳票出力まで記録・報告作業を一括管理。
タブレットのみで使用が可能。
こうした一連の仕組みにより、本社と現場、協力会社同士の連携が可能に。必要な情報をお互いにシェアし、作業進捗を管理できる体制を作り上げているのでした。
「現場で仕事が完結できるようになったことで、『現場のテレワーク』はできる環境が整ったと言っても過言ではないかもしれません。今後は、本社社員にもテレワーク(リモートワーク)を選んでもらえるように、制度を整備していきたいと考えているところです」
と市川さん。
そんな常盤工業の働きやすさを実現するITツールは、各部門で協議し整備してきました。
「弊社の平均年齢は41歳。現場にはベテランの職人も多く働いています。ツール選びでとくに重視したのは、若手からベテランまで使いやすいサービスであること。画面を見るだけでも使い方がわかるようなツールを選んできました。
実際に使ってもらえると、だんだん慣れてきて、効果を感じてもらえるものです。最初は抵抗感を持っていた人でも、今では『タブレットから書類が確認できないなんて考えられない!』『スマホから出退勤の打刻ができなければ不便!』と思ってもらえるほどになりました。みなさんの働き方をすこしでもよくできたかな、と嬉しくなりますね」
「全社的な働き方改革」では、社員の声を聴くことが最重要
その後、常盤工業の働き方改革はいよいよ全社的な取り組みとなっていきます。その象徴となったのが、2022年に本社をサステナブルなオフィスに改築したことでした。事務や設計を含めた本社の社員も、より柔軟な働き方にチャレンジしています。
実は常盤工業では、新社屋の稼働開始とともにフリーアドレス制を導入。かねてから進めてきたペーパーレス化を組み合わせることで、社員の業務内容にあわせて働くスペースを選べる環境を整備しました。
ミーティングや作業に最適な広々とした机のあるスペースや、ちょっとした相談に立ち寄れるスタンド席など、社員の働き方にあったオフィスレイアウトがなされています。
「部署ごとに島が分かれ席も固定されていたときは、他部門の人に声をかけづらい雰囲気があったと思います。今では、オフィスを見渡して『この件でちょっと話できますか?』と声をかけやすくなりました。会話のきっかけを掴みづらかった他部署の人とも交流できると好評です」
と鈴木さん。
本社の改築と同時並行で、フリーアドレス制やペーパーレスの実施という大きな改革を行ってきました。鈴木さんは、働き方改革を進める上での苦労を教えてくださいました。
「弊社には、若手からベテランまで年齢層の幅広い約100名の社員が在籍しています。当然ながら、働き方改革を進める上でさまざまな意見がありました。
その中で社長は、常盤工業のビジョンや方向性を社員とひざを突き合わせて何度も話をしてくれました。また、社員の意見を聞く場はいつも用意されていると感じます。
たとえば、フリーアドレス制を導入する際も、設計部門など特殊なシステムを扱う一部の部署には、グループの島や固定席を残しました。そうしたやり取りを重ねたお陰で、今では、何でも話し合える企業を目指そうという共通認識が社内に作れたと思います」
鈴木さんの言葉を受け、市川さんは社員との対話の重要性について語ります。
「社員との対話を諦めないこと。すべては難しくとも、どこか一部には社員それぞれの意見が採用されるようにするのが大事だと思っています。
100%がその人の思い通りにならないという意味で社員から不満の声をもらう場面はありますけれど、それも含めていろんな意見を議論するからよりよい企業になっていきます。
そのとき大切なのは、相手の意見にしっかり耳を傾けること。その意識を社員にも持ってもらえるように、これまで研修やワークショップを開いたり、特定のテーマについて作業部会を立ち上げたりしてきました。
今後は、柔軟な働き方を取り入れることで、コミュニケーションがより活性化してくれるのではないかと期待しているところです。さまざまな意見を取り入れ、よりよいアウトプットを残せるような仕事の仕方を、より上手にできる企業にしていけたら嬉しいです」
この先も豊かな街づくりへ貢献できるように
「ときポート」が完成したことで、これまでに取り組んできた働き方改革と、今後に目指している働き方とが融合しはじめているそうです。
「これまでの取り組みをひと言で表すと、『ハード面の働き方改革』だったと思います。デバイスの配布をはじめとする現場の執務環境の整備や、フリーアドレス制の導入による部署/固定席に捉われない働き方を実現してきましたので。
そして今後、私たち総務部門が着手すべきは、『ソフト面の働き方改革』になるでしょう。社員のマインドも含めて、サステナブルで柔軟な常盤工業ならではの働き方をいよいよ実現していくフェーズに入ったと感じます」
と鈴木さん。鈴木さんの言葉を受け、市川さんは次なる決意を語ってくださいました。
「ときポートが完成したのを皮切りに、場所と時間に捉われない働き方にいよいよ全社員が取り組もうとしています。私たちの新しい働き方を『RTW:REIWA・TOKIWA・WORKINGSTYLE』というテーマに定めました。
子育て中の女性社員も多く働いていますので、RTWの中には本社社員の在宅ワークも盛り込んでいます。社員がそれぞれのライフステージに合った働き方を選べ、安心して長く働けるような会社を実現していきたいですね」
社員の働きやすさを支える総務部門の視点から、鈴木さんは今後のビジョンを次のように語ります。
「今後は、本社社員の在宅勤務や将来の働き方を変えていくにあたり、就業規則や各種の規定を整えていきたいと考えているところです。常盤工業に合ったスタイルを導き出し、形にしていくのが私のミッション。今、全社の協力を得ながら進めているところです」
市川さんのビジョンは、会社と地域の「その先」を見通したものでした。
「常盤工業には若い世代も働いていますし、社員の大切なお子さんたちがいます。彼ら・彼女らがこの先も仕事をし、幸せな家庭を築けるように、浜松という街がこの先も豊かに発展して文字通り『サスティナブル』になってほしいと願っています。そのためにも私たちは、建設産業を未来永劫続く産業にしていかなければいけません。
環境負荷の少ない工法や建物の実現はもちろんのこと、地域の豊かな交流が生まれる場を増やしていきたい。そうした背景から、『ときポート』を地域の人々にも足を運んでいただける建物にしました。
この街の豊かな将来を考えるきっかけとして使っていただけたら嬉しいですし、私たちもみなさんからお知恵をお借りしたい一心です」
総合建設業として働く場所のアップデートを実行するだけでなく、働き方のアップデートや地域との関わり方のアップデートにも取り組む常盤工業。社員の人生まで大切に考え、より豊かな社会を次世代に繋ごうとしていく姿勢がとても勉強になりました。