「経理の仕事をテレワークで行うことは難しい」と考えている経理担当の方は多いかもしれません。たしかに入力作業や紙ベースの作業が多いと、経理は出社しなければできない業務と思えてしまうでしょう。
しかし、「まずは電子化から」と気楽に考えてみませんか。じつは経理業務の多くが電子化でき、経理のテレワークも書類や取引の電子化から一歩がはじまります。
経理業務を電子化すれば、部署の業務効率を向上できるだけでなく、タイムリーな経営判断をするのにも役立ち、企業全体にメリットが生まれます。本記事では、テレワークにつなげる経理業務の電子化について紹介します。
こんなにたくさん!電子化できる会計書類9選
経理業務というと、請求書の発行や郵送、経費精算など紙を使うことをイメージする人は多いのではないでしょうか。「申請や書類を電子化できれば、テレワークできるのに」と思える業務も少なくありません。
決まりきった作業に慣れていると見落としがちですが、じつは経理業務の多くは電子化が可能です。電子化できる代表的な書類には、以下のようなものがあります。
- 見積書
- 請求書
- 注文書・納品書
- 領収書
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
- 補助簿
- 損益計算書
- 貸借対照表
上記に関して、「作成や保存の手間が多いな」「社内の申請手続きが重複しているな」と感じたら、電子化を検討してみましょう。電子データで発行・受領できたり、取引データから会計ソフト上に経理数字を取り込めたりするものが見つかるはずです。
また上記は、電子帳簿保存法で電子保存が認められている書類でもあります。2022年1月の法改正により、一部要件に当てはまる取引は電子化が義務付けられますので、これを機に電子化を検討してみましょう。
参考:経理業務は電子化の時代!電子帳簿保存法を徹底解説! | 企業のお金とテクノロジーをつなぐメディア「Finance&Robotic」
経理のテレワークで管理会計もしやすく!経理業務を電子化する3つのステップ
伝票記入や給与計算、税金の計算をはじめとする処理作業が、経理部門の仕事になっていませんか?たしかに入力業務は経理において必要な作業です。しかし、それらの作業目的は、経営状況をタイムリーに「見える化」することにあります。
経営者は、経理部門がまとめた会計データを元に経営判断を行うからです。もしも経理作業を効率化し、取引データから即時的に売り上げや費用の実績値が掴めるようになれば、業績向上に貢献しやすくなります。そのため、本来的な経理の仕事とは、一つには経営判断を助ける会計データの整備といえます。
このように経営判断の材料となる情報を取りまとめ、提示できる会計のあり方を「管理会計」といいます。管理会計のためには、社内の取引データをいち早く・正確につかまなければいけません。そのため、社内データの電子化が必要になるのです。
電子化(ペーパーレス)によりテレワークできる環境を整えることは、管理会計の実践にもつながります。ここでは、テレワークの準備を管理会計の実施につなげるための3ステップを解説します。
STEP1.経理数字をデータで受け取る
経理数字をデータで受け取るようにし、経理担当の入力作業を減らしましょう。請求書や領収書を画像で読み込めればベストですが、そうでなくともCSVで申請書類を受け取ることで、データの読み込みが自動でしやすくなります。
基幹システムと会計ソフトを連携できれば、他部門との申請書類のやりとり自体がなくなせます。入れ替えのタイミングなどで、クラウド化や連携作業を検討してもらうよう経営者や担当部署に打診しておくことをおすすめします。
STEP2.データを会計ソフトに集約する
集めたデータを会計ソフトに集約して、必要なデータをすぐに取り出せるようにしましょう。たとえば、「先週1週間のキャッシュフロー」「昨年10月の売上」「季節ごとの客単価」など、経営課題に合わせて必要なデータを迅速に取り出して分析することが可能となります。
STEP3.経営に必要なデータをまとめる
最後に事業判断に必要なデータをまとめて、各部門の責任者に提出できるようにしましょう。
たとえば売上目標が未達成だったときに「売り上げをリカバリーしよう」と言われても、課員はどのように頑張れば良いかわかりません。しかし、「先月より客単価が8割程度下がっているから、来月以降は○○円以上で受注するようにしましょう」と具体的な数字を用いて説明すると、課員も個々に改善策を考えて行動できます。
さらに、日ごろから売り上げや費用に関わる数字を追うことで、経理部門から経営者や部門長に改善提案できるようになるでしょう。業績貢献につながり、経理部門の社内評価も高まります。
テレワークを機に経理作業の電子化を進めた企業の事例
経理作業の電子化を進め、効率化に成功した企業の事例を紹介します。ある企業は、非効率な作業や作業量の増加といった以下のような課題に悩まされていました。
- 二重入力による作業効率の低下・ミスの発生
- 紙の書類の保管や印刷コストがひっ迫
- 報告のない費用や未承認の売上計上が発生
- 事業継続計画に未対応
以上のような課題を抱えるなか、部署間の数字のやり取りの電子化と会計システムのクラウド化を実施したのです。すると、以下のようなメリットを得られました。
- 受注・請求・入金までのプロセスが一元化され、迅速な経理処理を実現
- 書類の保管・印刷代のコスト削減
- 社内全体での営業案件情報の共有
- 会計データはクラウド上に残るため事業継続性の心配が無用に
- サーバーメンテナンスや障害発生対応などの管理から解放
- 社内にいなくてもできる業務の増加
抱えていた課題解決はもちろん、テレワークの実施による労働環境改革といった当初想定していなかった二次的な効果も得られています。
まとめ:普段から電子化・効率化できる業務がないか考えてみよう
決まりきったやり方に慣れてしまうと見落としがちですが、電子化できる経理業務は意外と多くあります。「もしかして電子化できるかも?」「電子化すれば効率が良くなるのでは?」といった視点を持って、担当している経理業務を今一度見直してみましょう。
もちろん、すべての業務や書類をいきなり電子化することは現実的ではありません。そんなときは、 入力が重複している作業や紙ベースのやり取りから見直してみましょう。
経理業務をただの入力作業に終わらせず、管理会計につなげる意識が大切です。テレワークをきっかけに経理業務を効率化し、会計データの早期集計を実現して業績向上に貢献していきましょう。