経理のテレワークを進めたいと思っても、「他部署から反発されるのではないか」と心配していませんか?さまざまなITツールの登場により、経理のテレワークは十分可能となりましたが、他部署とのやりとりが頻繁にあるため「社内にいてもらわなければ困る」と言われることが多いかもしれません。
実は経理のテレワークには、周りから応援される導入方法があります。そこでこのページでは、経理のテレワークが難しいと考えられている理由から、どのように導入を進めていくべきかを解説します。
社内全体の理解を得ながら進める“経理のテレワーク”を考えていきましょう。
なぜ経理のテレワークは「できない」と思われている?
「経理のテレワークはできない」と、なんとなく諦めがちになっていませんか?
なかには経理のテレワーク環境を整備したいけれど、周りから「無理」だと反対されている人もいるかもしれません。
ですが、経理を含めたバックオフィスはテレワークが十分に実施できる職種です。また、証憑の電子保存やクラウド会計ソフトの活用などは、会計処理を迅速に進め経営力を高めるために必要な取り組みでもあります。
それなのになぜ、経理のテレワーク はできないと思われやすいのでしょうか?その理由をまず知っておきましょう。
出社しないとできない業務が多い
経理の業務には、出社して担当者の手で作業しなければならないことが多いと思われがちです。たとえば、以下のような業務は、「社内にいなければできない」と考えられやすい業務の代表例です。
- 記帳
- 書類への押印
- 銀行業務(振り込み・記帳)
ところが、クラウド会計ソフトや電子署名が登場したことで、こうした業務もオンライン上で行えるようになりつつあります。インターネットバンクなどを使うことで、振り込みなどのお金の流れもスムーズになる場合があります。
もちろん、会社で処理しなければならない業務もありますし、会計データを扱う以上はすべての業務を在宅で行うことは現実的ではないかもしれません。ただし、ITツールを使えば業務効率が上がるのに、対応していない業務がある場合は注意が必要です。
「社内でやらなければならない」というのは、本当にそうでしょうか?その考えは、固定概念になっていませんか?まずは、経理の常識を見つめなおしてみることが重要です。
ほかの部署とのやり取りが多い
社内からあらゆる伝票や証憑が集まるため、その受け取りや処理のために会社にいなければならないと言われるかもしれません。しかし、紙の書類の受け取りや、経理部への問い合わせに都度答えることが、非効率になっている場合はないでしょうか?
請求書や伝票も電子データで会計ソフトに取り込めば、入出金が自動化できたり、対応漏れがなくなったりすることもあります。ビジネスチャットツールを活用すれば気軽に連絡を取り合え、ログも残り安心です。
テレワークをきっかけに、他部署と行うやり取りのルートや内容を思い切って見直してみると良いかもしれません。
社外で業務をするとセキュリティが心配
経理のテレワークを始めると会社の重要な情報を外でも見ることになるため、情報ろうえいの心配が高まります。経理業務の特質上、企業のキャッシュフローや従業員の給料明細など、極めて機密性の高い情報を扱う機会が多くあるためです。
しかし、実際にはパソコンのセキュリティ環境を整えたうえで、さまざまな書類を電子化した方がセキュリティ強化につながる場合があります。アクセス権限や使用するデバイスを制限したり、すべてのアクセスログを記録できたりするためです。「テレワーク環境の方が安全だ」という場合は、十分あり得えます。
社内に応援されながら経理のテレワーク化を進める方法
経理はテレワークのできない職種だと思われやすいのは、会計業務を会社外で行うことへの不安があることが理由のひとつです。あわせて、経理のテレワークによって、会社や社員はどのようなメリットを受けられるかが分かりづらいこともあります。
バックオフィスを支える職務であるからこそ、経理のテレワークが全社的にプラスの影響があることが求められるでしょう。また、各部署の課題に寄り添い、業務負担をなくす・楽にする観点を持つことが重要です。
上手に立ち回れば、周りに応援されながら経理のテレワーク化を進められます。
幹部の抵抗感をやわらげる
まず、部長クラス以上の幹部の抵抗感をやわらげる必要があります。実は、テレワークに消極的な人を階層に分けてみると、幹部以上であることが多いためです。
インフォマートの調査によると、テレワーク利用中の人の92.3%が「今後もテレワークを利用したいか?」という質問に対して前向きな回答をしています。しかし、経営者~部長クラスの48.9%は、テレワークのメリットを感じていないことがDropBox Japanの調査で判明しています。
経理がテレワークをするメリットを、幹部目線に立って伝えるようにしましょう。
- 月次決済の早期化、日次集計の手間削減、
- 入金の早期化、未入金件数の削減
- 電子帳簿保存法の改正への対応
- 請求書をはじめとする重要書類の紛失リスク低減
- 柔軟な働き方改革による人材確保・離職率低下
幹部の理解を得られたら、テレワークの導入は大きく前進します。なぜならテレワークは全社的な取り組みとなるため、経営者の意識改革が重要だからです。意識改革の方法は、以下の記事も参考ください。
参考:テレワーク利用企業、約2ヵ月で3.4倍 9割が継続に前向きも急な導入で課題残る/インフォマート調査|SalesZine
参考:テレワーク、経営者の約半数は「メリット感じない」 – Dropbox Japan調査|マイナビニュース
小さな取り組みから始め、効果を実感してもらう
テレワークに向けた小さな取り組みを部内でこっそりと始めましょう。小さな変化を起こし効果を実感してもらえれば、大きな取り組みでも賛成してもらいやすくなるからです。
どんな部署にも、改善されると日常業務がすこし楽になるような事柄があるものです。たとえば、申し込みが入った時点で請求書が発行できるようにする、見積書の発行までの日数を短縮する、など。
そうした小さな変化で日ごろの業務が楽になる実感をしてもらいましょう。すると、会計ソフトや自動化ツールを入れるといった大きな取り組みも抵抗なく受け入れてもらいやすくなるのです。「経理に提出する書類はデータで送ってください」といきなりお願いするのは大変でも、まずは手入力の省略に楽さを感じてもらえる機会があると、社内の協力が得やすくなります。
いきなり大変革を起こすのではなく、小さな取り組みで社内に効果を感じてもらうことから始めてみてください。
業務が楽になることを説明して他部署の理解を得る
経理のテレワークが進むことによって、他部署の業務が楽になることを説明することで理解を得ましょう。たとえば、以下のようなメリットが他部署にもたらされます。
- 手入力の手間がなくなる
- 押印が不要になる
- 請求書発行が迅速になる
- 早く稟議承認を得られる
- 社内申請のための書類を作成する手間がなくなる
相手の部署の業務に合わせてメリットを伝え、ITツールの導入をはじめとする経理のテレワーク環境整備が業務効率向上に繋がることを理解してもらいましょう。
コミュニケーション体制を整える
他部署と円滑にコミュニケーションを取る体制を整えることも重要です。そのために、チャットツールを活用しましょう。
分からないことがあったら、チャットで気軽に質問をもらうようにするのです。経理部専用のルームや相談窓口を作り、社内にアナウンスするのも良い手です。
チャットツールで質問を受け付けることで、すぐ回答が必要な質問とそうでない質問を切り分けられます。経理部のペースで回答ができるようになりますし、溜まった質問を集計して、社内のマニュアルやQ&Aを用意することも可能になります。
社内の近い距離にいることで、「分からないことがあったら経理に聞いてしまおう」という考えが根付いてしまっていないでしょうか?わざわざ経理部を尋ねなくても業務が完遂できる仕組みを、コミュニケーション環境の整備から始めましょう。
経理のテレワーク導入を円滑に進めるポイント
「テレワークの導入」と聞くと、毎日在宅で仕事をするイメージを持つかもしれません。しかし、その必要はなく、段階的にテレワークへ移行する方が、定着もしやすくオススメです。
週5の勤務日すべてをいきなりテレワークにしてしまうのは、社内の反発を招くリスクが高いといえるためです。
重要データの取り扱いに不安を感じる人も多い部門なので、経理のテレワークは段階的に進めるようにするのが得策です。徐々に移行していくことで、他部署との連携がスムーズになり、経営者からの理解も得られやすくなります。
以下に、経理のテレワーク導入を円滑に進めるポイントを3つお伝えします。
1.いきなり100%テレワークにしない
まずは、書類のデータ化や銀行業務をネットバンクに切り替えるなど、できることから取り組めばテレワークのハードルはそれほど高くありません。社内で業務を遂行するにもデータ化やネットバンキングの利用によって業務効率は向上します。
ある程度ITツールを使った業務に慣れてきたら、週1でテレワーク実施日を設けましょう。いきなり経理部署全員が毎日テレワークすることは難しいですが、社内に経理がいなくても業務遂行できることを証明できます。徐々にテレワーク実施日を増やし、社内で定着させましょう。
2.他部署と連携しながら社内全体の業務負担を軽減する
他部署と連携しながらテレワーク化を進めることで、社内全体の業務負担を軽減できます。まずは営業・人事・総務などにヒアリングをして、会計に関連する面倒な業務内容を把握しましょう。面倒な業務がないか、どうなると嬉しいのかを確認すれば、テレワークに移行する優先順位を決められます。
3.経営に貢献できることを経営者に訴える
テレワークによって経営に貢献できることを経営者に訴えましょう。経営者が納得をすれば、トップダウンでテレワークを推進してもらえ、ITツール導入にかかる予算も下りやすくなるためです。
すべてデータで管理できるように慣れば、データを検索するだけで売り上げや経費など経営に関わることを瞬時に分かるようになります。月次報告や期末報告が迅速にでき、経営に活かせるようになるでしょう。
まとめ:他部署から応援されながら経理のテレワークを進めよう
上手に他部署や幹部に働きかけることで、経理のテレワーク導入は周りから応援されやすくなります。社内全体の業務効率向上を手伝うイメージで、経理のオンライン化やデジタル化を進めていきましょう。
ただし、いきなり100%テレワークにするのは得策ではありません。部署内でできる小さな取り組みから始め、周りにもテレワークのメリットを実感してもらいながら、段階的にテレワーク環境を整備しましょう。